師匠からの便り

緊急事態宣言が出たから、

と云うわけではありませんが、

このところあまり彼と出かけておりません。

 

それでこのメモ帳にはあまり書き込みができませんでした。

だからでしょうね、師匠からメールがいくつも届きました。

 

わたしが書けないからでしょうね。

あ、そうそう。

彼も変な小説を書くのをあきらめたみたいで

「筆を折った」なんていうんです。

筆を折ったせいか、

最近中折れです。

折れない筆がいいわ。

というと、すぐにすねるんです。

 

あ、師匠からのメールです。

 

◇   ◇

 

 

楓子ちゃん、元気してますか。

こんなご時世だからと云って出歩かないのは損よ。

 

わたしなんか暇を持て余している人間だし、

ついでに彼もヒマ人でしょ。

うまくできてるわ。

ヒマ人がヒマを謳歌できる時代って、

そんなにはないからさ。

 

こないだもね。

彼が夕方から床屋の予約があると云うのを無理やり連れだしてやったの。

そうよ、ちゃんと「やった」のよ。

ラブホじゃなくてAホテル。

最近ここはね、リモート用といって

朝から夕方まで貸してくれるようになったの。

ラブホのフリータイムみたいでしょ。

 

一休みした後、彼を床屋まで送って行って、

わたしはお洒落な喫茶店で読書。

終わるとLINEで連絡がはいるから、拾ってやって、

ふたたびアパホテル…。

 

これが逆だと困るのよね。

せっかくセットしてもらっても、ベッドで髪がくしゃくしゃでしょ。

あ、楓子さん、Aホテルはおススメよ。

最上階に天然温泉があって、ここは無料で入れるの。

五メートルくらいの広さがあるから、十分泳げるわ。

ちょうどその時、誰もいなかったからわたし、当然泳いだ。

気持ちよかったな。

ほんと、楓子さん、おすすめ。

是非泳いできて。

 

とにかく、

彼を引っ張り出して、少しは楽しんでおいでなさい。

わたしたちは二人の年齢を足すと120よ。

あなたたちはまだ二けたでしょ。

 

こんなときこそ、二人でこもっておもいきり不謹慎なこと、

しなくちゃ!

 

 

◇   ◇

 

 

はーい。

師匠たちを見習って、頑張りまーす。