鮎の塩焼きと「若鮎」と

暑い日だった。

 

「暑いわねえっ」

師匠からの電話だった。

 

はい。

暑いです。

わたし、溶けてました。

 

「じゃあさ、今度鮎の塩焼き食べに行かないこと」

 

わっ、うれしい。

わたし鮎の塩焼き大好きなんです。

 

「彼がね、鮎を食べて、塩焼き食べて、

そのあとデザートで鮎を食べさせてあげる、

って云うのよ。どう思う」

 

鮎好きのわたしにはたまらない話題です。

でも師匠のことだ。これだけで終わるはずがない。

 

「楓子さん、なにか考えたでしょ?」

 

えっ。考えたって、なにをですか?

この会話を疑問符返し、と云いますが、

当然、考えました。考えたに決まってます。

 

「彼がね、まず一回。お腹を空かせるための軽い運動。

そのあとメインディッシュの塩焼き食べて、

食後はデザートに彼の…」

 

皆まで言わせません。

やだっ、師匠ったら。

昼間っから何云ってるんですか。

 

「ふふふ。どう。

あなたも彼連れてらっしゃいな。

こういうの。ダブルブッキング…って云わないわね」

 

はい。云いません。

でも、わたし鮎の話が出たときに、

なんとなくひらめいたのです。

鮎か。

鮎というならおいしい魚。

うん、絶対につながってくる。

出てくるなこれは。

だから、デザートの鮎と聞いたときに

長良川の「若鮎」という和菓子を連想して、

(師匠の彼って、若鮎サイズなんだ)

と思ったりもしたんですが、

いやいやこんなこととても師匠には云えません。

 

「どうする。楓子ちゃん。今度一緒に行くっ?」

 

はいっ!

間髪入れない元気に返事。

 

鮎の塩焼きか。

いいな。

「師匠、ごちになります」

 

電話を切ろうとしたら

「わたし、楓子ちゃんにバナナの話、したかしら?」

 

いいえ。

バナナ話は聞いてません。

 

「じゃあさ、聞いてくれる?」

 

ということで明日この続き、

バナナの話を紹介しますね。