バナナの正しい食しかた。

「わたしたち、いつものことだけど、

バナナは両端から一緒に食(くら)いつくのよ」

 

いつもではありませんが、

わたしたちもたまにやっております。

 

「別段慌てて食べる必要はないけど、

少しずつ口の中で噛んでいくうちに、

当然真ん中まで来るわね」

 

師匠は淡々と云うが、

頭の中で像を描いてみると

師匠と師匠の恋人が一本のバナナを両側から一斉に食べ始める。

そのうちに…。

 

「そうなのよ、唇が合うわよね。

合ったら終わりじゃないの。それからスタートなの」

 

意味がよくわかりません。

きっとわたしはそんな顔をしていたのでしょう。

でも安心してください。

云っておきますがわたしは意外と演技派です。

おおよそ師匠の云いたいことが読めてきた。

 

「食べるバナナがなくなったら、

今度は口の中のバナナを相手の口に送り込むの。

どっちが相手に多くたべさせるかの闘いなの」

 

想像するに噛み砕かれたバナナの果肉はだんだんとスムージー状態になる。

そのスムージーは、さらにお互いの唾液や体液が加わり、

微妙な味覚となるはずだ。

 

わっ、考えるだにおぞましい。

それ以上に素敵!

 

「でもね、こないだ、公園のベンチでこれやっちゃったの」

 

えっ。

凄い。

スーパーヒーローみたい!

 

「誰も見ていないと思ったら、通行人に随分と見られたみたいで、

顰蹙の嵐が無言で襲ってきたのよ。

いいこと、ふーちゃん。

バナナの食べ方ではこれが一番おいしいのだけど、

お外では決してやっちゃだめよ」

 

はーい大丈夫です。

そんなことは絶対にしません。

フィリピンバナナにしろ、台湾バナナにしろ。

ましてや彼のバナナにしろ、人前ではそんな食べ方は致しませんから、

師匠、安心してください。