「映画館でね、彼がね…」

 

師匠が、含み笑いをこらえながら云うんです。

どうも、映画館で上映中に、したらしい。

それって、いつのことですか?

この質問には答えが返ってきませんでした。

 

「一番後ろの席の真ん中あたりに座ってね」

と師匠が続けます。

 

「わたし、映画に感動して涙ぐんでいたら、あのひと、

突然わたしの脚を広げさせてね、足を前の背もたれに載せるんですよ」

 

え、ということは師匠、映画を観ながらМ字開脚。

「そうして、あそこを指先で撫でるんです。

これが気持ち良くて、映画のストーリーが入ってきません」

それはそうでしょう。

 

「口を開けて声を出さないように耐えてたら、今度はおもいきり

2本の指でつかんでひねるんです。もう痛いったらない。

それが暗闇の中で息をひそめてのことだから、痛くて気持ち良くて、

ほんと、声を出さないようにするのが大変でした」

 

わたし、師匠からこの話、前にも聞いたような気がしますが、

少し内容が違っているので、ははん、最近、また試みたな、と

読みました。

 

「でもね、わたしよりも彼の方が周りを気にしたみたいで…」

 

師匠の武勇伝を聞かされたら、負けてはおられません。

わたしも彼をそそのかして、映画館なんとかをやってみます!

 

「映画館のあと、ちゃんとベッドでするのって、最高よ」

 

はいはい師匠、よーくわかりました。

ご高説しかと承りました。