あたし、ばかになっちゃった!
わたし、ばかになっちゃいました。
気持ち良くて、ふわふわしていて、
感情が高まったときに、何かがなくなったんです。
なくなったら、わたし、自分が誰だかも忘れてしまって…。
そんな感じになったんです。
うーん。
お利口さんの壁があるんだとしたら、
その壁が崩れてなくなった。
違うかな。
壁が倒れて、風がすーっと通るようになった。
そんな感じです。
わっ。
わたし、ばかになった!
そう思ったときは、びっくりして、
身体はふわふわしているのに、
「えっ、こんなんでいいの」と戒めたり、
「ま、いいか。気持ちいいんだもの」
そのとき彼に聞かれたんで、
考えたら、やっぱりお利口さんの壁が倒れてしまったみたい。
そんな説明がわかりやすかったんです。
…ということを師匠に話したら、
「お利口さんの壁がなくなったという表現、素敵ね、楓子さん」
とお褒めの言葉をいただきましたが、
「わたしの場合は、お利口さんの壁なのか、常識という箍なのか
よくわからないんだけれど、でもねあなたと同じような気分になったわ」
そう云われてうれしかったです。
安心です。
でも、さすがは師匠。
わたしならば「お利口さんの壁」なのですが、
師匠にとってのそういう壁は、一つではなくて、
またひとつ、さらにひとつと倒れていって、
快楽フィールドがどんどん広がり、見果てぬ荒野になるんだそうです。
わっ、まるで「嵐が丘」の世界ですね。
遮るものとてない悦楽の世界を絶頂の風が吹き抜ける。
その風に乗って、わたしはいったいどこに運ばれて行くのでしょうか。
「それが見果てぬ夢なのかもしれないわ」と師匠が云いました。
見果てぬ夢、か。
もっともっと見続けたいな。
なるんだけれど、