バナナの正しい食しかた。

「わたしたち、いつものことだけど、

バナナは両端から一緒に食(くら)いつくのよ」

 

いつもではありませんが、

わたしたちもたまにやっております。

 

「別段慌てて食べる必要はないけど、

少しずつ口の中で噛んでいくうちに、

当然真ん中まで来るわね」

 

師匠は淡々と云うが、

頭の中で像を描いてみると

師匠と師匠の恋人が一本のバナナを両側から一斉に食べ始める。

そのうちに…。

 

「そうなのよ、唇が合うわよね。

合ったら終わりじゃないの。それからスタートなの」

 

意味がよくわかりません。

きっとわたしはそんな顔をしていたのでしょう。

でも安心してください。

云っておきますがわたしは意外と演技派です。

おおよそ師匠の云いたいことが読めてきた。

 

「食べるバナナがなくなったら、

今度は口の中のバナナを相手の口に送り込むの。

どっちが相手に多くたべさせるかの闘いなの」

 

想像するに噛み砕かれたバナナの果肉はだんだんとスムージー状態になる。

そのスムージーは、さらにお互いの唾液や体液が加わり、

微妙な味覚となるはずだ。

 

わっ、考えるだにおぞましい。

それ以上に素敵!

 

「でもね、こないだ、公園のベンチでこれやっちゃったの」

 

えっ。

凄い。

スーパーヒーローみたい!

 

「誰も見ていないと思ったら、通行人に随分と見られたみたいで、

顰蹙の嵐が無言で襲ってきたのよ。

いいこと、ふーちゃん。

バナナの食べ方ではこれが一番おいしいのだけど、

お外では決してやっちゃだめよ」

 

はーい大丈夫です。

そんなことは絶対にしません。

フィリピンバナナにしろ、台湾バナナにしろ。

ましてや彼のバナナにしろ、人前ではそんな食べ方は致しませんから、

師匠、安心してください。

鮎の塩焼きと「若鮎」と

暑い日だった。

 

「暑いわねえっ」

師匠からの電話だった。

 

はい。

暑いです。

わたし、溶けてました。

 

「じゃあさ、今度鮎の塩焼き食べに行かないこと」

 

わっ、うれしい。

わたし鮎の塩焼き大好きなんです。

 

「彼がね、鮎を食べて、塩焼き食べて、

そのあとデザートで鮎を食べさせてあげる、

って云うのよ。どう思う」

 

鮎好きのわたしにはたまらない話題です。

でも師匠のことだ。これだけで終わるはずがない。

 

「楓子さん、なにか考えたでしょ?」

 

えっ。考えたって、なにをですか?

この会話を疑問符返し、と云いますが、

当然、考えました。考えたに決まってます。

 

「彼がね、まず一回。お腹を空かせるための軽い運動。

そのあとメインディッシュの塩焼き食べて、

食後はデザートに彼の…」

 

皆まで言わせません。

やだっ、師匠ったら。

昼間っから何云ってるんですか。

 

「ふふふ。どう。

あなたも彼連れてらっしゃいな。

こういうの。ダブルブッキング…って云わないわね」

 

はい。云いません。

でも、わたし鮎の話が出たときに、

なんとなくひらめいたのです。

鮎か。

鮎というならおいしい魚。

うん、絶対につながってくる。

出てくるなこれは。

だから、デザートの鮎と聞いたときに

長良川の「若鮎」という和菓子を連想して、

(師匠の彼って、若鮎サイズなんだ)

と思ったりもしたんですが、

いやいやこんなこととても師匠には云えません。

 

「どうする。楓子ちゃん。今度一緒に行くっ?」

 

はいっ!

間髪入れない元気に返事。

 

鮎の塩焼きか。

いいな。

「師匠、ごちになります」

 

電話を切ろうとしたら

「わたし、楓子ちゃんにバナナの話、したかしら?」

 

いいえ。

バナナ話は聞いてません。

 

「じゃあさ、聞いてくれる?」

 

ということで明日この続き、

バナナの話を紹介しますね。

 

子供の名前を決めました!

「楓子ちゃん、わたしたちね、決めたのよ」

 

いつものことだが、師匠の話には主格がない。

「真理子か、百合子にするつもり…」

 

まだ見えてこない。

ペットでも飼うのかしらと思ったり。

 

「彼がね、子供を作ろうと云うの」

 

「…はいっ?」

 

「ぽかんとした顔しないで。

ばかね。これは想像のこと。イマジネーションよ」

 

あ、それはそうだ。

師匠は50代半ばだし、師匠の恋人も70くらいだった。

真顔でいわれると、はてなんだろうと思うものですが。

そういうことかあ。

 

「もうね、女の子ってはなから決めているのよ…」

師匠の話はまだまだ続きそうです。

彼が絵を描き始めた…

楓子さん、お久しぶり。

お変わりないですか。

あなたも、恋人も。

 

 

というなんだかお手紙風なメールが師匠から届きました。

こうなると気になるから電話しちゃいます。

なにしろ師匠は長いラインでのやり取りがあまりお好きでないみたい。

というか、自信がないんでしょうね。

なにか話したいことがあるんだ、きっと。

 

電話したら突然こんなことを言うんです。

 

「ねえねえ。あなたの彼、最近、絵とかスケッチ書き始めてない?」

 

…いやあ、少し前までは裸の写真撮らせろだとか、

縛った写真を記念に残そうよ、とか言ってましたけど、

最近はもっぱら実行というか「やる方」に専念して、

写真など気にしなくなりましたね。

だからわたしの裸を描くなんてことはないし…。

 

聞き返すと師匠のお相手が絵を描き始めたらしいのです。

それも師匠の裸とかではなく、

「当たり前でしょ。いまさらわたしのヌード描いて何が面白いの!」

 

師匠の彼が書き始めたのは、

ヤマメだとか鮎だとか、あれっ、岩魚だったかな、

まいいいか。とにかく魚の絵だというんです。

 

上から見た図。

横から見た図。

それぞれ魚には特有の模様がある。

それを丹念に描いているんだけど、

なんだか、模様は丹念でも、

外郭というか輪郭は「ドへた」でよくわからない。

 

「それがね、その絵をわたしに見せなくて隠しているみたいなの。

どう思う。それとなくあなたの恋人に聞いてくれないかな。

こういうときの男の心理みたいなものをさ」

 

ということで、彼に聞いたのです。

思い出したのが、彼のおちんちんをお口に入れた後だったので、

わたしのおまたに顔をうずめた彼も、なんだかもぐもぐしてました。

「そんなのわかるわけないでしょ」と彼は気持ち良さに耐えながら、

それでも質問には答えてくれました。

 

男にだってわからないんですよね。

 

ヒゲって、どうなの。

気候が緩んできて、

久しぶりに師匠から連絡があった。

「ごめんね。春一番みたいで…」

と、いつもと変わらぬ元気な声で安心した。

 

1か月ぶりくらいかな。

突然「わたしの彼の顔、覚えてる?」

と突然云う。

師匠の彼って、師匠と食事したときなんどか同席されたこともありますが…。

 

ヒゲをはやしたのよ、と嬉しそう。

「楓子ちゃんの恋人は、おヒゲあるの?」

 

どうやら彼のおヒゲ自慢なよう。

 

「いいのよ男の人のヒゲって」

ここからはもうグダグダだった。

師匠が彼の顔の上にまたがって押し付けていたら、

チクッて痛みが走った。

「いゃだ、なあに」と声を出すと

「ごめんごめん。ヒゲがあたったのかな」とお股の下で彼がもぞもぞ

答えたんだそう。

 

「痛かったんですか? おヒゲが師匠の大事なところに刺さって」

わたしが心配げに聞くと

「反対よ。その刺激がたまらんの。」

 

はあっ。

てことは自慢なのかな。

 

「楓子さんも彼にヒゲはやさせなさい。ほんと、気持ちいいんだから」

 

気持ちいいって云ったって、

無精ひげで頬ずりされても痛いのに、

敏感な場所をチクチクはなあ…。

女性の「立ちション」の件

少し前のことになりますが、

師匠が「女性の立ちション」のことを話してくれました。

しばらく会ってなかったので、

先日お会いしたとき

「そういえばこの間、お話しされた…」と水を向けますと、

顔色がバーッと晴れやかになり、

「そうそう。云うの忘れてたわ。

あれね、ラブホで試したら、ちっともうまくいかなくて

 

どうやら師匠は足を少し開き気味にして、

上体を前にかがめるようなスタイルでやって見たようです。

「でもね、後ろに飛ばないのよ、それが」

 

つまり師匠の彼が見たというおばあさんのオシッコは

完全にお尻より後ろに飛んでいた、

と云うことらしいのに、

後ろどころか、真下でもなく、

どちらかというと前。

つまり男性の立ちションと同じように前に飛んだそうです。

 

それを聞いてわたしたちも挑戦しました。

彼に見届けてもらって、

お風呂場で実験です。

 

…。

 

ダメでしたね。

前でした。

後ろには飛びません。

真下に行けばいいところです。

 

でも、ここで諦めたら「エスエム・セカンド」の名が泣きます。

再挑戦するつもりです。

乞う、ご期待!

うまく云ったら報告します。

オシッコの話です。

 

師匠と話をしていて、

こんな話になりました。

 

「そういえばさ楓子さん、あなたって

女性が立ちションしてるところ、

見たことある?

 

ええっ、立ちションって、どういうことですか。

ふつうわたしたち便器に腰かけてしますよね。

 

意味がわかりません。

 

「彼がね、若い時…つまりずっと昔のこと、

あなたが生れる前だと思うけど、

阿蘇の方に旅行したんだって。

バスに乗っていたら突然、

彼のおばあさん位の女性が運転手に、

停めてって言ったんだって」

 

田舎のバスは停留所でなくても乗り降りしていい場合が

あるらしい。

「バスが停まって、扉が開くと、その女性とっとと降りて、

田んぼの畔にむかってお尻突き出したの。

彼が上から見ていたら、顔を上げた女性と目があってね、

その人、彼を見てほほ笑んだらしいの」

 

そこで師匠は一息ついた。

「おばあさん、いわゆる道でオシッコしたようで、

オシッコしながら彼と目があったから、

ああ助かったわ、とでもアイコンタクトしたのかしら」

 

いろいろ前振りはありましたが、

つまり女性も道端でおしっこができる

ということを師匠の彼は

云いたかったんでしょうね。

 

でも、あいにくと師匠は見たことがない。

もちろん体験したこともありません。

 

そう云われても、わたしだって知らないし。

そんなことができるなんて考えもしなかった。

 

「今度、ラブホで試してみるわ。

彼が見たまんまの恰好をして、どうなることか」

 

師匠はやる気です。

新種気鋭っていうのかな。

 

わっ、期待大です!

よーし。師匠ができたら。

わたしも、やってみよ。

 

でも、さつきのバスの話。

オシッコタイムに停車して、

待っている。

 

昔は運転手さんも、バスの乗客も

おおらかだったんですね。